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スマートホームなどの最新技術を取り入れているウーブンシティとは? トヨタがゼロから作り上げる街!

自動車メーカーが「街」をゼロから作り上げるという壮大な計画が動き始めました。
2020年1月7日、トヨタはアメリカ・ラスベガスで開催された世界最大規模のエレクトロニクス見本市「CES 2020」で、開発中の「ウーブンシティ」プロジェクトを発表しました。ウーブンシティはあらゆるモノやサービスがつながる実証都市であり、進化し続ける街です。「完成時期」という概念はなく、投資額も明らかではありません。今回はスマートホームなどの最新技術を取り入れているウーブンシティについて解説します。

ウーブンシティとは

ウーブンシティ(英:Woven City)とは、先端技術を人々のリアルな生活環境の中に導入・検証出来る実験都市のことです。静岡県裾野市にある東富士工場跡地(2020年閉鎖)にて建設中であり、自動運転車やロボット、住宅など、モノや人がインターネットでつながり、集めたデータを活用して最適なサービスを提供します。

ウーブンとは「織り込まれた」の意味であり、「ウーブンシティ」はトヨタグループの祖業が織機の製造(豊田自動織機)であることにちなんで名づけられました。
2021年2月23日に着工開始され、敷地面積は約70万平方メートル(東京ディズニーランド約1.5個分)です。

ウーブンシティの3つのコンセプト

ウーブンシティは以下のコンセプトをブレない軸とし、「ヒト」「モノ」「情報」のモビリティにおける新たな価値と生活を提案し、幸せの量産を目指しています。
①ヒト中心の街
②実証実験の街
③未完成の街

ヒト中心の街

ヒト中心の街とは、そこに住まう人、そこに生まれるコミュニティの幸せと成長をもっとも大切にする街づくりのことです。

ウーブンシティ内で使用するエネルギーには、再生可能エネルギーや水素燃料電池など、温室効果ガスを排出しないカーボンフリーなものを活用します。
建物はカーボンニュートラルであり、建築分野で注目されている木材を積極的に使い、屋根には太陽光発電パネルを設置するなど、環境との調和やサステイナビリティを前提とした街づくりを基本としています。
電源である燃料電池を含むインフラと物流用の自動運転車走行道を地下に設置し、街の中心や各ブロックに公園や広場をつくり、住民同士のコミュニケーション形成を促しています。

実証実験の街

実証実験の街とは、日々いとなむ生活を通して未来技術を進歩させる活きた街づくりのことです。

ウーブンシティは、トヨタが実現に向けてこれまで構想を練ってきた「コネクティッド・シティ」に分類されます。
トヨタが構想するコネクティッド・シティとは、世界中から先進的な企業や研究者に集まってもらい、CASE[Connected(繋がる)Autonomous(自律運転システム)Shared(共有化)Electric(電動)]、AI、パーソナルモビリティ、ロボットなどの実証実験を行ってもらおうというものです。

たとえば、公道では法的かつ安全面の問題から、実験中の自動運転車を自由に走らせることができないため、実証実験を行うことが難しいです。
ウーブンシティはトヨタの私有地ですので、どんなモビリティを走らせても法令に触れるようなことはありません。

ウーブンシティの街路には自動運転のクルマが行き交い、家のなかや商店においてサービスを提供するのはロボットやAIといった将来像が示されています。

e-Palette構想

2018年に掲げたe-Palette構想も取り入れられています。e-Paletteとは、次世代の自動運転車です。

普通の自動車と違い、運転手はおらずバスのように複数人乗れます。テーマパーク内を走るような車に見えますが、トヨタでは街の中で走らせることを目標としています。
自動運転レベル4であり、完全自動運転であるレベル5に徐々に近づいているようです。

未完成の街

未完成の街とは、住民とパートナーの継続的な参加によって成長・進化し、共に未来を創造し続ける街づくりのことです。

ウーブンシティには2025年までに人が暮らし始める予定で、初期段階では技術やサービスの「発明家」と利用者である高齢者や子育て世代360人程度が入居する予定。将来的にはトヨタの従業員やOBとその家族など2,000人を想定しています。

多くの社会課題を抱えている高齢者や子育て世代と発明家を一緒に住まわせることで、課題解決に向けた発明を促すことが目的です。

発明家には居住期限を設け、期限までに成果が出ない場合は別の発明家に交代させます。
住民は室内用ロボットなどの新技術を検証するほか、センサーのデータを活用するAIで健康状態をチェックするなど、日々の暮らしの中に先端技術を取り入れます。

トヨタが掲げるスマートシティー構想

トヨタ自動車はスマートシティーである「ウーブンシティ」を、あらゆるものやサービスがつながる実証都市と表現しています。

人間が生活する環境にIoTやビッグデータ、AI、ロボット、スマートホーム技術、自動運転やモビリティーサービス〔モビリティー・アズ・ア・サービス(MaaS)〕、パーソナルモビリティといった新技術を持ち込み、それらを活用すればどのようになるかを実証実験できる街をつくります。ウーブンシティでは、150×150mの土地を1区画(原単位)として、各区画でさまざまな実証実験を進めています。

トヨタが掲げるスマートシティー構想は、新技術やサービスの開発・実証のサイクルを素早く繰り返し、人々の暮らしを支えるあらゆるモノやサービスが情報によって繋がることで生まれる新たな価値やビジネスモデルを見出そうというものです。

道づくりがウーブンシティの骨格

ウーブンシティは一大実証実験場といえますが、最も重視するのは道でしょう。何故なら、自動車メーカーであり、モビリティーカンパニーへのモデルチェンジを図っているトヨタが設計するからです。元トヨタ自動車の技術者で愛知工業大学工学部客員教授の藤村俊夫氏は「道づくりがウーブンシティの骨格だ」と言っています。
ウーブンシティは、トヨタの構想を基にデンマークの建築家ビャルケ・インゲルス氏が「道」を編み込んでデザインされています。トヨタは道を以下のように分類しました。

高速走行する車両専用の道

1つ目が「高速走行する車両専用の道」です。

完全自動運転車かつ無公害車が走る道です。乗用車や商用車が主体であり、トヨタはMaaS専用電気自動車(EV)「e-Palette」などの自動運転車も高速走行する車両専用の道を走ると説明しています。しかし、説明動画ではe-Paletteは歩行者と共存していましたので、e-Paletteが高速走行する車両専用の道を走るというのは現実には考えにくいと言われています。
高速走行する車両専用の道は、ウーブンシティと将来的に新たにできる隣のウーブンシティ間をつなぐ道、あるいはウーブンシティと高速道路のインターチェンジとをつなぐ道になるのではないかと予測されています。

歩行者と低速走行する車両が共用する道

2つ目が「歩行者と低速走行する車両が共用する道」です。

e-Paletteなどの低速自動運転車が走行する一方で、人も歩いて移動できる道です。
ウーブンシティ内にあり、e-Paletteなどが人や物を運んだり、移動店舗として使われたり、ウーブンシティと最寄り駅をつないだりしています。

歩行者専用の道

3つ目が「歩行者専用の道」です。

人だけが歩いて移動できる公園内歩道のような道です。

道づくりにこだわる理由

道づくりにこだわる理由は、自動運転システムとモビリティ開発と道路環境が街づくりに密接に関係しているからです。

自動運転システム

自動運転システム開発には2つのアプローチがあります。
両システムの中身は変わらず、同じハードウエアとソフトウエア、AIで構成し、ソフトウエアでガーディアンとショーファーのそれぞれの機能に切り替える仕組みになっています。

高度安全運転支援システム(ガーディアン)

1つ目が「高度安全運転支援システム(ガーディアン)」です。

従来の先進運転支援システム(ADAS)の延長線上にあり、人の運転を前提としたシステムです。車内外の環境をモニターし続け、危険な状況になると人の運転に介入します。

完全自動運転を目指すシステム(ショーファー)

2つ目が「完全自動運転を目指すシステム(ショーファー)」です。

ショーファーは完全自動運転のためのシステムです。

モビリティ開発の柱

モビリティ開発には2つの柱があります。

利用車両(小型の移動・輸送専用のモビリティ)

1つ目が「利用車(小型の移動・輸送専用のモビリティ)」です。

e-PaletteやLSEV(低速EV)などはこちらに分類されます。利用車とショーファーを組み合わせることにより、シームレスな完全自動運転を実現します。

保有車両(走りや移動を楽しむクルマ)

2つ目が「保有車(走りや移動を楽しむクルマ」です。

低重心・軽量・高剛性のある保有車にガーディアンを搭載させることで、楽しくかつ安全なクルマを造ります。運転環境が運転者の能力を超えた場合、自動でガーディアンモードが立ち上がって危険な状態を回避するため機能します。

道路環境

道路環境は以下の通りです。

・エッジコンピューティングと5Gを活用する交通システムと街の中、街と街、街と駅をシームレスに繋ぐ自動運転専用の道路環境
・車の運転が楽しめる交通渋滞のないスムーズに走ることができる道路環境

ウーブンシティから広がるトヨタ戦略

ウーブンシティから広がるトヨタ戦略は、モビリティ開発の2つの柱と自動運転システムと道路環境を融合する事で、以下を目指しています。
・人、もの、エネルギーの流れ、暮らしをコネクテッドによる最適制御な街づくり
・ICT/IoTをはじめとする先端技術やサービスを実装したスマートな街づくり
つまり、道づくりから街づくりは始まるのです。

また、この戦略によりトヨタが完全自動運転で走るMaaS専用車ばかりを開発するわけではなく、乗って楽しい保有車の開発の方も継続することがわかります。

まとめ

スマートホームなどの最新技術を取り入れているウーブンシティについて解説してきました。以下、まとめになります。

・ウーブンシティはあらゆるモノやサービスがつながる実証都市であり、進化し続ける街
・ウーブンシティのコンセプトは「ヒト中心の街」「実証実験の街」「未完成の街」
・トヨタは、モビリティ開発・自動運転システム・道路環境を融合し、ICT/IoTをはじめとする先端技術やサービスを実装したスマートな街づくりを目指す戦略を立てている

ウーブンシティは、人々の未来の暮らし、働き方、移動を大きく進化させる先駆的なプロジェクトです。3つのコンセプトをブレない軸とし、幸せの量産を目指しています。将来的にはこの地で大勢の人が暮らし、生活環境に自動運転車やロボット、AIやIoT、スマートホームなどの最新テクノロジーを取り入れて、技術を実証させながら、それらと共生していく社会を実現していくでしょう。

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