業界分析

スマートホームのプライバシー問題とは? 日常会話がサーバ上に漏れ出す可能性もある!

スマートホームを高齢者住宅に使うことで、介護の人材不足を補う手段の一つとなります。たとえば、スマートカメラや人感センサーなどによる遠隔見守りやスマートスピーカーにより声だけでIoT機器を操作することができます。
しかし、見守りを監視に感じる高齢者やインターネットに繋げることで情報漏れのリスクなど、プライバシーの問題が立ちはだかります。今回はスマートホームとプライバシーについて解説します。

スマートホームの安心・安全に向けたサイバー・フィジカル・セキュリティ対策ガイドライン策定

スマートホームはIoTに対応した住宅設備・家電機器などがサービスと連携することによって、住まい手や住まい手の関係者に便益を提供し、どんどん進化していっています。
身近な機器の例として以下のものが挙げられます。

・声だけで様々な機能が利用できるスマートスピーカー(Google Home、Amazon Echo、Apple Homepodなど)
・屋内使用時の便利な機能ももつスマートバンド(Apple Watchなど)
・スマートスピーカーやスマートバンドと連携して働くスマート家電(電灯、掃除機など)

しかし、多くの一般家庭ではIoT機器の導入や維持・運用に一貫した計画性がなく、ご使用発生の可能性もあり、サービスによってはサイバー空間における問題が想定外の開錠や閉じ込めといった現実空間における問題を引き起こす可能性があります。

また、スマートホームは世界的にどんどん市場を拡大していっているにも関わらず、サーバ上のガイドラインやプライバシーに関する明確な策定がありませんでした。

このような問題に対して、従来からの機器単体におけるサイバーセキュリティ対策に加え、住まいや住まい手の特性も含めて、多様なステークホルダーを交えた検討が不可欠となります。

そのため、スマートホームにおける住まい手の安心・安全の確保に向けた取組の進展を期待して、2021年4月経済産業省により「スマートホームの安心・安全に向けたサイバー・フィジカル・セキュリティ対策ガイドライン」が策定されました。

スマートスピーカーによるプライバシー問題

スマートスピーカーは音声アシスタントを搭載し、日常の雑用をさりげなく手助けしてくれるスマートホーム製品です。音声で指示すると音楽を再生するといった基本的なことだけでなく、対応製品と連携させてスマートホームを構築すれば、照明をつけたり玄関を解錠したりすることもできます。
非常に便利なスマートスピーカーですが、AIアシスタントに話しかけた音声は各社サーバーに送出・保存されるためプライバシーへの懸念が絶えません。これはスマートスピーカーだけでなく、スマホのAIアシスタントも同じです。

スマートスピーカーとスマートフォンは、常に部屋の録音をしているわけではなく、ウェイク・ワードという「Alexa」「OK Google」「Hey Siri」などあらかじめ決められたワードを検知した場合のみ反応するになっています。

音声で指示をこちらから出しますが、その内容をスマートスピーカー単体では解析することはできないため、録音またはストリーミングで各社のサーバ上に送信し、そこで内容を解析する仕組みになっています。そのため、ウェイク・ワードと似た言葉に反応し、音声アシスタントが誤起動して、前後数秒間の家庭内の生活音が知らない間に録音・送信される可能性は十分あります。

サーバ上に日常音声が流れ出る可能性

Amazonのスマートスピーカーを3台愛用している女性がデータ開示を求めると、合計数3,534件もの膨大な量の音声ファイルがAmazonのサーバ上に保存されていることがわかりました。多くはAlexaに話しかけた音声の記録であり、「Alexa、照明をつけて」と命じる声が、室内の環境音とともにはっきりと記録されていました。

女性は2台のAmazon Dotと1台のAmazon Echoも利用しており、同期した覚えのないスマホ上の連絡先情報に加え、スマートスピーカーの正確な設置場所を示す位置情報ファイルまでもサーバ上に保存されていたそうです。理論的にはさらにプライベートな情報が録音されていた可能性もないとは言い切れません。

一連の経緯を本人がTikTokで公開すると瞬く間に世間の関心を引き、19万を超える「いいね」を集めました。
このことは英サン紙が報じ、米ニューヨーク・ポスト紙、豪『news.com.au』などが追って取り上げています。この騒動は、AI開発とプライバシー保護のバランス感覚を改めて考えさせられる問題といえるでしょう。

高齢者住宅に必要とされるスマートホーム機器

高齢者住宅として必要とされているスマートホーム機器は、転倒検出などのリスク管理機能を備えた機器です。

たとえば、スマートバンドには転倒検出機能が備わっており、高齢者が屋内で転倒した場合、装着しているスマートバンドからその情報が検出され、屋内外の離れた場所にいる必要な人に自動で送信されます。
転倒検出以外にも、睡眠分析機能や家電操作機能など屋内での生活を豊かにする機能が備えられているものもあり、蓄積されたデータをPCでさらに詳しく解析することができます。とある高齢者介護施設では、入居者全員にApple Watchを提供し、健康増進を目指す実証事業が行われているそうです。

このように、身に着けて使用する電子機器をウェアラブルデバイスといいます。ウェアラブルデバイスを用いて介護施設でのリハビリからのストレス検出を行い、高齢医者を守る技術もされています。
ウェアラブルは屋内であればどこにいても検出が行えますが装着されていないとできません。しかし、転倒検出はウェアラブルでなくても可能であり、カメラや床センサーなどでも実現できます。
また、空気室をモニタリングするセンサー機器や床ずれ検出を行うマットレスなど、家庭内で使用する事でスマートホームを促進するテクノロジーは次々と世の中に生み出され、発表されています。

高齢者がスマートホームに期待するだろうと予測した基本的な機能

韓国の高齢者向け住宅内で行われた68歳〜87歳(平均78歳)アジア人9人への実験により、高齢者がメリットに関してスマートホームに期待するだろうと予測した基本的な機能は以下の通りです。

・転倒検出、ヘルスケアモニタリング、日常動作認識
・空気質モニタリング
・エネルギー消費モニタリング

転倒検出、ヘルスケアモニタリング、日常動作認識

1つ目が「転倒検出、ヘルスケアモニタリング、日常動作認識」です。

実現するデバイスには心拍数、昇降階数、歩行距離、消費カロリー、睡眠パターンを記録する機能が備わっているスマートバンドが採用されました。24時間装着します。
高齢者のプライバシー侵害にならないよう本人に許可された人物でないと、屋内にいくつか取り付けられスマートバンドと連携するレシーバーによって収集されたデータにアクセスできないような取り決めも交わされました。

空気質モニタリング

2つ目が「空気質モニタリング」です。

実現する機器は温度、湿度、CO2量、揮発性有機化合物、ハウスダストを検出します。機器本体にディスプレイがあって結果が見やすい上、ボタンも一つしかないので高齢者が扱いやすいようになっています。ダイニングテーブルに設置しました。

空気質モニタリング

3つ目が「エネルギー消費モニタリング」です。

実現する機器には各家電の異常な動作検出を行うスマートメーターが設置されました。この機器は高齢者が家電製品を使う際のストレスから解放すると考えられています。

実験の結果でわかったこと

実験の結果、高齢者はスマートホーム機器によって快適さと同時に不快感も経験したことがわかりました。高齢者からの意見は以下の通りです。

・スマートバンドの装着感は快適だが、洗い物や手を洗う、お風呂、睡眠中でも装着しなければいけないのが不快なので外したかった
・空気室モニタリング機器に対して、ダイニングテーブルという日常生活に大事なスペースに置くのは不快なので、廊下や窓際などに置いてほしかった
・スマートバンドやスマートメーターのディスプレイが小さすぎて字が読みにくく、表示内容が理解しづらかった
・全ての機器に対し充電が難しかったので、長持ちする電池を使ってほしかった

今回、実験に参加した全ての高齢者は、スマートホーム全体の使いづらさを差し引いてもメリットを享受したい姿勢でした。体験してみることでメリットの大きさ、デメリットの小ささが感じられたのではないかと考えられています。

スマートバンドに関する意見で睡眠中など外したかったとありましたが、高齢者は睡眠時は特に健康上トラブルが起きる可能性が高いです。身に着ける必要のない機器で今後モニタリングすることが代打案として提案されるかもしれません。

今回の実験から得られた結果は、従来の研究結果とは異なるものでした。
従来、スマートホーム機器における重要な問題はプライバシーの侵害とされてきました。しかし、今回の実験では9人中8人がスマートホーム機器により収集された健康データが介護者や医療機関に共有されることに対して好意的でした。
何故なら、それによって遠隔地に住む家族や友人、専門家が自分達を助けることができるからです。プライバシーに対する懸念よりもメリットが大きいと感じているようです。
ただし、エネルギー消費モニタリングデータに関しては9人中2人が他人に共有されたくないとはっきりと主張しました。

この実験結果と高齢者の意見から、情報技術に対する高い能力の人は、プライバシー侵害に対する懸念を表しやすいのではないかと予測されています。
もしそうだとすると、今の若者世代が高齢化した時、現在の比にならないぐらいプライバシー侵害に対して懸念を大きく表すようになるでしょう。遠くない未来のプライバシー侵害への懸念に対して、さらに対策を強化させる必要があるでしょう。

まとめ

スマートホームとプライバシーについて解説してきました。以下、まとめになります。

・2021年4月経済産業省により「スマートホームの安心・安全に向けたサイバー・フィジカル・セキュリティ対策ガイドライン」を策定された
・スマートスピーカーにより、サーバ上に日常音声が流れ出る可能性がある
・スマートホーム機器は高齢者住宅に必要とされる機能がたくさんある

スマートスピーカーなど、スマートホーム製品によるデータ流出は今回例に挙げたもの以外でもたくさん事例が出ているようです。ネットにあらゆるものが繋がっているのが当たり前な現代の若者世代は情報を耳にしやすく、高齢者に比べてプライバシー問題に関して敏感なのかもしれません。スマートホームはますます市場が拡大していき、これから増々便利になって私達の生活に身近になっていきます。メリットや使いやすさだけを見るのではなく、プライバシー侵害対策を必要以上に強化させて、便利に安全に使いこなしましょう。

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