業界分析

スマートホームの普及率は? 日本でスマートホームが進む理由は社会問題にあった!

スマートスピーカーが日本で販売されはじめたのは、2017年から2018年にかけてであり、これにより日本でも「スマートホーム」という言葉が認知されるようになりました。スマートホームとは、IoTやAIなどのテクノロジーと家のさまざまな製品がつながることで、住人にとって安全・安心で快適な暮らしを実現する住宅のことです。日本におけるIoT家電の市場は毎年成長しており、今後も拡大が続くと予測されています。しかし、世界と比べると日本のIoT家電成長率と普及率は後れを取っています。
今回は、日本のIoT、スマートホームの普及率について解説します。

世界より普及率が遅れている日本

アクセルラボの調査(2020年)では、日本国内におけるスマートホームの認知度は56.4%と半数以上が知っているにもかかわらず、実際にスマートホームを導入しているのはわずか1.8%でした。

アメリカではスマートホームの普及が1,400万世帯(全世帯の10%)を超えると言われており、日本でも今後導入が進むことは想像に難くありません。

IHS Markit(世界の金融市場データや情報サービスを提供)によると、2017年時点で全世界のネットワークに接続されたIoT機器の数は約270億個であり、2030年には約1,250億個と5倍近く増加し、全世界でやり取りされるデータ量の年平均成長率は約50%になると予測されています。

IT専門の調査会社IDC Japan株式会社によると、世界全体のスマートホームデバイス出荷台数が2023年には14億6,000万台になると予測しています。

2019年1月~3月だけを見ても、スマートデバイスの出荷台数は世界全体で1億6,860万台となりました。

この急成長を支えているスマートデバイスは、スマートTV、スマートスピーカー、ドアロックなどで、そのなかでもスマートスピーカーは、前年比133.9%増と、特に急成長を遂げています。

野村総合研究所によると、2019年時点での日本のスマートスピーカーを保有している世帯は約7.6%であり、2025年には約39%に上昇すると予測されていますが、アメリカの2019年の普及率は25%であり、日本の普及率は世界に比べて低いということがわかります。

アメリカでスマートホーム化が進んでいる理由

アメリカでスマートホーム化が進んでいる理由の一つは、複数のプラットフォームサービスで様々なIoTデバイスが連携することによって利便性を感じるからでしょう。

たとえば、人が近づいたら鍵の開け閉めをしてくれるスマートロックの場合、ただそれだけではあまりメリットを感じられません。せいぜい鍵を出さなくても扉の鍵が開く程度にしか感じないでしょう。

スマートロックは鍵が開いたらセンサーが人を感知し、スマートカメラが起動して、スマホから映像を見る事ができます。これにより、鍵が開いて便利なだけでなく、鍵のかけ忘れ防止や子供が学校から帰ってきた様子を確認できるなど、セキュリティの強化にも繋がります。

日本でIoT家電需要が高まる理由

スマートスピーカーは、それ単体でもさまざまな機能を持っています。また、ほかのスマート家電のハブとして、多くのスマート家電を音声操作することで、便利で快適な生活を実現します。

スマート家電を導入する人が増え、それがスマートホームの普及につながっていく日本でIoT・スマート家電需要が高まる理由は、生活利便性や住環境の向上だけでなく社会的な問題も含まれます。

共働き世帯の増加

1つ目は「共働き世帯の増加」です。

2018年の男女共同参画白書によると、男性だけ働いている世帯と共働き世帯の1980年と2017年を比べるとほぼ形勢逆転した状態になっており、共働き世帯は年々増え続けています。

 男性だけ働いている世帯共働き世帯
1980年1,114万世帯614万世帯
2017年641万世帯1,188万世帯

共働き世帯が増えたことで世帯収入は高くなります。

しかし、互いに家にいる時間が減るため、少ない人数で家事をはじめとした家庭内での作業・業務を担うことになり、「家事負担の問題」が顕著になります。

少しでも家事の負担を減らすため、AIエアコン、AI掃除ロボット、AI冷蔵庫、AIスピーカー、スマート電球、スマートプラグ、スマートロックなど、スマート家電を導入するケースが増えています。

高齢者の単身世帯の増加

2つ目は「高齢者の単身世帯の増加」です。

総務省の「親族世帯数に占める核家族化世帯数の比率の推移」によると、2015年の全世帯の85.4%が核家族であり、2035年には89.0%まで増加する見込みが発表されています。

核家族化が進むと、高齢者の単身世帯が増加していくでしょう。

1980年には男性約19万人、女性約69万人だった一人暮らしの高齢者数は、2015年になると男性約192万人、女性約400万人と、男性は10倍以上、女性も6倍ほど増加しています。

ここで問題となるのが、遠隔地に住む両親の健康状態です。

「独居老人」「孤独死問題」など、高齢者に関連した社会問題が増加している昨今、遠隔地に住む親・高齢者の健康状態のチェックや見守りを(ネット接続のカメラなどを設置して)スマートホーム化することで、万が一の際にはすぐに電話やメールで子どもたちに通知されるように設定するケースが増加しています。

高齢者の単身世帯の増加

3つ目は「高齢者の単身世帯の増加」です。

内閣府による「少子化社会対策白書(令和元年版)」によると、2015年の30代後半の男性は3人に1人、女性は4人に1人が未婚であると発表しています。

 30~34歳の未婚率35~39歳の未婚率
男性47.1%35.0%
女性34.6%23.9%

必然的に1人暮らしも増え、セキュリティ対策としてスマート家電を購入し、自宅のテレビや照明を外出先から操作してオンにするケースも増えています。

日本でIoT・スマートホームの普及が難しい理由

日本でIoT・スマートホームの普及が難しい理由は以下の通りです。

中古物件への導入が難しいIoT家電もある

1つ目の理由が「中古物件への導入が難しいIoT家電もある」ことです。

IoT家電はインターネットに接続されているのが大前提ですので、インターネット環境が整備されていない物件の場合は使用できません。中古物件では新築時とは違い、既存の製品を取り外す必要があるため、工賃は高くなる傾向があります。

その他にもスマートロックを取り付けるドアの型が古い場合は対応できません。

自分では導入が難しいIoT家電もある

2つ目の理由が「自分では導入が難しいIoT家電もある」ことです。

エアコンやインターホン、給湯器など自分では導入が難しいIoT家電もあります。
自分で取り付けられない場合は、専門の業者に取り付けをしてもらわなければなりません。

入居者の意向だけでは導入できないIoT製品がある

3つ目の理由が「入居者の意向だけでは導入できないIoT製品がある」ことです。

たとえばエアコンや給湯器などの備え付けの設備や共用部のものなどは、オーナーや管理会社に決裁権があるため、入居者の意向だけでは導入できません。

IoT機器を導入するための費用は、物件のオーナーが負担することが多いため、導入に前向きではないオーナーも少なくありません。また、導入コスト回収のために家賃を上げる可能性もあります。

IoTの設備を導入しても入居者はあまりメリットを感じられない

4つ目の理由が「IoTの設備を導入しても入居者はあまりメリットを感じられない」ことです。

日本はアメリカなどと比べると犯罪率が低く、住宅の面積が狭い傾向があるため、防犯対策のスマートカメラやAI玄関など、IoT設備を導入してもそれほどメリットを感じられないかもしれません。
そのため、賃貸住宅ではIoT製品への設備投資に対して前向きなオーナーや管理会社は多くありません。

IoT家電の利用実態アンケート

新型コロナウイルス感染拡大の影響で在宅時間が増加したことにより、白物家電機器の国内出荷は一般社団法人 日本電機工業会(JEMA)「2021年度 電気機器の見通し」によると、前年度比102.8%となる見込みです。

家電の中でもIoT家電の利用実態はどうなっているのか、住まいや暮らしに関する様々な“気になるコト”を調査する「フリエ住まい総研」が日本在住で20歳以上の方694名を対象に調査しました。その結果、IoT家電を自宅に持っている人は23.8%、持っていない人が76.2%で、約4人に1人持っていることがわかりました。

 持っている持っていない
20代、30代28.0%72.0%
40代以降20.5%79.5%

年代別にみると、若年層の方が7.5%程多くIoT家電を持っていることがわかりました。

持っている「IoT家電」の種類は以下のようになります。
1位 スマートスピーカー(49.7%)
2位 テレビ・モニター(27.9%)
3位 エアコン・空気清浄機(23.0%)

IoT家電に対して感じるメリットは以下のようになります。
1位 遠隔操作(83.6%)
2位 家電の稼働状況の把握(20.6%)
3位 家事などの時間短縮(18.8%)

将来的に取り入れたいIoT家電は以下の通りです。
1位 エアコン・空気清浄機(44.2%)
2位 照明(35.5%)
3位 スマートロック(30.4%)

今後もし住み替えがあった場合、複数のIoT機能が備え付けられたスマートホームを検討すると答えたのは57.3%、しないと答えたのは40.1%、その他と答えたのは2.6%でした。

まだIoT家電の所持率は低い現状ですが、将来的にはスマートホームを取り入れて便利な機能に囲まれ、効率的で楽な生活をしたいと考えている方が多いのではないかという結果になりました。

まとめ

スマートホームの普及率について解説してきました。以下、まとめになります。

・日本のスマートホームの普及率は世界に比べて遅れている
・スマートホーム需要が増えつつあるのは、便利になるだけでなく、日本が抱える社会問題も含まれている
・IoT家電の使い方がよくわからず、メリットを見出せない人が多い現状だが、将来的にはスマートホームの普及率は上がっていくと予想される

スマート家電は音声やスマートフォン1つで便利・快適な生活を実現します。それだけでなく、エアコンやテレビの電源消し忘れ防止や、電力消費量の可視化による省エネ効果、離れた場所に住む両親とのコミュニケーション強化などといったことにも効果を発揮します。
スマートホーム化は日本が抱える社会問題解決にも繋がりますので、各家庭がスマート家電に対してメリットを見出すことができれば、今後さらに普及していくでしょう。

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